理事長所信

一般社団法人 稚内青年会議所
第71代理事長 横田 祥史

 
【はじめに】
 青年会議所は、「修練」「奉仕」「友情」の三信条のもと、まちづくりを使命として活動している。稚内青年会議所においても、先輩諸氏の想いを引き継ぎ、現役メンバーがその想いを未来に紡ぐことで、時代に即した活動を展開し、地域社会に多大な貢献を果たしてきた。私たちが先頭に立ち、この活動を推進し続けることで、稚内にさらなる活力をもたらしたい。稚内青年会議所は、このまちにとってなくてはならない存在であり、我々は若者らしく、果敢に挑戦していく。
 私は稚内に生まれ育ち、幼少期より人前で話すことに苦手意識があった。学芸会では台詞が出ずに動けなくなってしまったこともあり、小学生の頃には友人に勧められて生徒会長に立候補したが、緊張からうまく話すことができずに落選した経験もある。人前で堂々と話すことができればと願ったことは言うまでもない。
 そんな私の趣味は自動車全般であり、幼少期から叔父より「お前が会社を継ぐんだぞ」と言われて育った。2007年、私が20歳の時、父の癌が発覚した。当時、私は室蘭で職に就いてたが、父の会社に入る決断をした。父は1年半に及ぶ闘病生活の末に他界したが、父と叔父が青年会議所の先輩であったことは、その後、先輩諸氏からお誘いをいただいた際に知った。叔父は理事長も経験し、現在も尊敬する大先輩の一人であり、父も理事長ではないが様々な役職を経験し、多くの仲間に慕われていたと聞く。
 そして私もご縁があり、2016年に一般社団法人稚内青年会議所に入会する。入会後は多くの仲間に恵まれ、私自身、人前で話す力をはじめとする様々な成長の機会をいただいている。入会から9年の歳月の中で、数々の役職を経験させていただき、振り返れば多くの素晴らしい先輩諸氏との出会いがあり、時には叱咤激励を賜り、自己の成長につなげることができ、これまでの青年会議所での活動が今の私を支え、かけがえのない財産になっていると確信している。
 
【冬といえばを楽しさに】
 非常に風が強く、厳しい寒さにさらされる最北端のまちであっても、ここには「雪まつり」という地域に根付いた冬の風物詩がある。私自身も幼少の頃、母に連れられて雪まつりに参加し、このまちの冬を楽しんだ。現在、私には子供がおり、我が子をはじめ、現代の子供たちにもこの厳しい寒さを「楽しさ」に変え、このまちの冬の魅力を存分に体感してもらいたいと考える。
 本年も、わっかない氷雪の広場実行委員会組織の一団体として、企画・運営を青年会議所が主体となり参画していく。行政との密なコミュニケーションを図り、過去の冬季事業を十分に調査・分析した上で、目的意識を明確にし、事業終了後には成果を検証する。
「冬のまつり」といえば、まちに笑顔が溢れる光景を創出することでありたい。このまちの子供たちはもとより、大人や観光客も一緒に楽しむことができる、賑わいと魅力ある雪まつりを創造したい。
 
【稚内の祭りを元気に多くの人と笑顔が溢れるほどに】
 北門神社例大祭は、長い歴史を誇る伝統的な祭りであり、1961年より稚内青年会議所が深く関わりをもつようになった。神輿渡御では、まちの発展を祈願し、多くの市民と共に練り歩き、祭りの盛り上げに貢献している。また、稚内には「稚内みなと南極まつり」という地域に根差したもう一つの大切な祭りがある。
 我々稚内青年会議所は、地域と共に歩む団体として、稚内の地に住まう若者であれば、この歴史ある祭りに積極的に参加し、多くの方々にユーモア溢れる最高のパフォーマンスを披露することで、会場を笑顔と笑いで満たし、稚内の活性化に寄与したい。
 
【未来ある子どもたちへ向けた青少年育成】
 これまで稚内青年会議所では多くの青少年育成事業を展開し、次世代の成長を支援してきた。この育成事業を通じて、子供たちが将来大人になった際、稚内には様々な企業や団体があり、人手不足という課題を抱えている現実を認識し、協力・連携のもとで地域を支える人財として成長していってほしいと願う。
 子供たちには、地元で育ったことに誇りに感じてほしい。幼少期から多様な経験に触れることで興味が広がり、想像力が育まれるからだ。幼少期に体験したことは心に深く残り、やがてその経験が彼らの人生にとってかけがえのない価値となり、将来に大きな影響を与える。我々は、子供たちと向き合い、心に残る体験を提供することで、可能性を秘めた未来の人財を育成し、それがやがて稚内の未来を支えると信じている。
 そのためには青少年の育成は極めて重要であり、本年もこれまで実施してきた青少年育成事業「わくわくワークフェス」を開催したい。この「わくわくワークフェス」を通じて、子供たちが多様な職業や体験に触れ、いずれは地元稚内に根付いてもらえるような意識を育みたいと願うからだ。「わくわくワークフェス」を行うことに、大きな意義と価値があると確信している。
 
【我がまちを担うリーダーの育成】
 昨今、様々な青年団体が活動している中、それぞれの団体が異なる使命をもって運動に取り組んでいる。しかし、特に青年の人財育成において、青年会議所ほど特化した組織は他にない。青年会議所は、多様な業種の青年経済人からなる異業種の集団であり、各企業や団体から輩出されたメンバーが集まっている。それでは、企業や団体は私たち青年会議所に何を求めているのか。それは、地域を牽引できる人財に成長し、任期を経た後には一段と成熟した姿で戻ってきてほしいという想いに他ならないと考える。
 青年会議所での活動は、決して容易なことではない。しかし、地域に根差し社会貢献を行い、同世代の仲間と共に活動する中で得られる経験はメンバーにとって人生における大きな成長の場となるだろう。各メンバーが自己を見つめ直し、挑戦を続ける中で必ずや乗り越えなければならない壁に直面するはずだ。この壁を克服する経験こそが青年会議所での活動の醍醐味であり、リーダー育成につながる。
 地域貢献に努め、同世代の仲間と共に活動することで得られる経験は、メンバー一人ひとりを大きく成長させると確信している。いずれは、この経験をもって各組織や企業、団体に貢献してもらいたいと願い、明るい豊かな社会の実現を目指す我々が率先して行動し、地域を牽引できるリーダーとなることが求められている。
 
【時代に適した総務活動】
 稚内青年会議所の活動を支える上で、総務は欠くことのできない存在であり、組織の要である。組織の成長のためには、安定した会議運営と堅実な組織運営が不可欠であり、総務がその役割を担っている。信頼される組織であり続けるためには、これまで受け継がれてきた運営方法を大切にしつつ、新たに確立される仕組みを今後も継承し、組織の安定に邁進していかなければならない。
 また、本年は創立70周年という節目の年にあたり、組織としてさらなる向上を目指し、現行の運営方法の見直しを行い、必要に応じて改善策を積極的に導入していきたい。稚内青年会議所が発展し、引き続き信頼される組織であるために、定められた「5・3・1システム」などのルールを厳守し、組織全体が一丸となってその徹底を図っていく。
さらに、広報活動においても情報発信の多様化が進む現代において、時代の変化をしっかりと捉え、効果的なツールを活用して稚内青年会議所の活動や運動を地域に発信していく。これにより、稚内青年会議所の存在をより多くの方々に認知していただき、地域との結びつきを強固にしていきたい。
 
【全員で取り組む会員拡大】
 会員拡大はなぜ必要なのか。それは、会員数が減少すれば、組織の運営や活動が困難になり、事業の縮小を余儀なくされるためである。会員拡大こそが稚内青年会議所の幹であり、メンバーが増えることでその枝葉が広がり、力強い組織基盤が成り立つ。
 しかし、なぜ一部の青年が青年会議所への入会を躊躇するのか。我々が積極的に行動を起こし切れていないためではないか。リストアップを含め、会員拡大の取り組みはメンバー全員で共有し、組織全体で取り組むべき課題だろう。理事会や例会の時間を活用して拡大の状況を報告・相談する場を設け、情報共有を徹底したい。
 我々は先輩諸氏が築き上げてきた稚内青年会議所の活動を絶やさないためにも、共感を抱く新たな仲間を一人でも多く迎え入れ、組織を次代へとつなげていく。
 
【創立70周年の開催に向けて】
 2025年度、一般社団法人稚内青年会議所は創立70周年の節目を迎える。1955年の設立以来、先輩諸兄姉が築き上げてこられた70年の歴史は、偉大で尊い活動の積み重ねであり、地域や多くの方々に支えられてきた歩みでもある。この記念すべき70周年式典では、長きにわたる先輩諸兄姉の功績に深い感謝の意を伝えると共に、75周年、80周年と続く未来へ向け、新たな一歩を踏み出す契機としたい。
 また、敬愛する先輩諸兄姉や同じ志を抱く仲間をお迎えするにあたり、稚内ならではの特色を生かし、心からの最高のおもてなしをお届けできるよう邁進したい。記念事業においては、昨今、人口減少や若者の地元離れが進む中、若者が地元に対して関心をもち、自分の住むまちに誇りを抱ける環境を築きたい。若者が地域と関わり、自らの意見がまちに届く経験を通じて「自分たちの手でまちの未来をつくる」という実感をもてるようにしたい。これによって地域への愛着が生まれ、将来、彼らが稚内で活躍する礎となると考える。また、若者は社会の変化に敏感で、時代のニーズを的確に捉えていると考える。彼らの視点によって、新たな発想や従来とは異なる解決策が見出される可能性があり、今後の稚内をより活気ある場所とするためには、こうした若者のアイデアも求められているのではないか。
 さらに、地域全体の活性化にもつなげ、若者と我々が協力する姿を示すことで、他の市民にも「自分たちも何かしたい」という意識を促し、市民全体の意識向上に寄与できる事業としたい。
 これらの取り組みを円滑に運営し、稚内青年会議所が新たな未来へ向けて力強く一歩を踏み出す機会としたい。
 
【結びに】
 現代においても、人口減少は歯止めがかからず、先行きの見えない状況が続いている。私たちが暮らす地域は、次第に衰退していくのではないかという不安を抱えている。しかし、我々は現状をしっかりと理解し、受け止めたうえで、どのように「明るい豊かな社会」を実現していくかを考え、行動に移さなければならない。
 稚内に暮らし、ここで歩んできた私たち青年がこのまちを想い、果敢に挑戦し、行動することこそが最も求められている。青年経済人として、また稚内青年会議所の一員として、英知と勇気と情熱をもって、地域の未来に貢献するべく「明るい豊かな社会」の実現に向けて一歩ずつ歩んでいく。
何事にも挑戦する気持ちをもち、次なる時代を切り拓いていく覚悟で、共に歩んでいこうではないか。